夜明け前

書いた小説など

飲んで大学生 壱

 二十歳の夜、僕は都会の路地で歌っていた。

 当時僕はどうしようもない大学生だった。大学生がまともというのも変なのだが、およそ最近のまじめ腐った学生からも、ちょっとやんちゃな学生からしても、ダメだった。この年というのは、中学生とも、高校生とも違う、社会の一歩手前にいる中で、なんだかよくわからない鬱屈した感情が襲ってくる。そのよくわからないモヤモヤがなんだかイライラさせるのだ。だからちょっとコンビニのゴミ箱にゴミを力いっぱい投げ入れてみたり、パチンコに入り浸ってみたり、公園で酒を煽って「飲まなきゃやってられないぜ」なんて悪態をついたりするのだろう。大人のようで子供みたいな振る舞いをしている。蛹から大人という蝶へ羽化する一歩手前なのだろう。

「おい、飲み行こうぜ」

 そう声を掛けてきたのは、友人の可神だった。大学は地元から離れた大学へ通っていた為、総友達は多くなかった。可神はその貴重な友人の一人だ。

「別にいいけど、金ないぞ。昨日スロットで二万負けたから」

「まぁ俺らの飲み方は金かからないからな、奢ってやるよ」

 よく見れば可神の手には既に鏡月ボトルが鎮座していた。準備のいいやつだと内心思いながらも、また公園かとうんざりした気持ちになった。